23/78のナンバーが振られ、1781年にジョン・アーノルドが手掛けた懐中時計の独自性は様々な理由で裏付けされています。まず、この時計にはジョン・アーノルドが発明した技術がいくつか組み込まれており、そのほかにも「ダブルS」テンプと螺旋状ヒゲゼンマイ、そして温度の影響を受けにくいスプリングデテント脱進機などの卓越した技術が光っています。

更に、この時計は、シルバーのケースやエナメルの文字盤、ムーブメントが全て無傷のままで全く修復の手を加えておらず、完全にオリジナルの状態を保つ唯一の一品です。

サザビーズのオークションで成し遂げられた今回の素晴らしい出来事は、ジョン・アーノルドが高精度な計時技術を発展させる極めて重要な役割を担ったことの証明でもあります。

ジョン・アーノルドは、その傑出して優れた機械式時計のノウハウで、瞬く間に高い評価を確立しました。彼はまた、ルビーのシリンダー脱進機を製造した初めての時計職人でもあります。彼は非常に小さいハーフクォーターリピーター時計が埋め込まれた指輪を製作してジョージ3世に献上し、益々高まった彼の名声は富裕層に人気を集めることとなります。ジョン・アーノルドは優れたリピーターウォッチやカレンダーウォッチを作ることで充分、裕福に暮らしていくことはできましたが、彼はその状況に安住することなく、当時の時計づくりの技術としては非常に難しい課題に絶えずチャレンジし続けました。
船が安全に航海できる、つまり科学に変革をもたらし、天文学の境界を飛び越えるような時計を制作すること。それは精密な時間測定の限界への挑戦であり、アーノルドは熱い情熱を持ってこれに取り組みました。

1770 年から 1790 年の間に、アーノルドは幾多の苦難を乗り越えながら時計製造技術を磨き続け、クロノメトリー(時間測定)の時代の到来を告げる決定的な改良に成功しました。デテント脱進機、らせん状ヒゲゼンマイ、らせん状ヒゲゼンマイの等時性を保つためのヒゲ外端曲線、史上初の金で作ったヒゲゼンマイ、 気温変動から生じる誤差を補正する2種の金属で製造されたテンプといった様々な革新的発明は、全てアーノルドによるものです。

アーノルドのクロノメーターは、当時の偉大な探検家や航海者に愛用されてきました。彼の作ったレギュレーター(時計職人が調整用として使った精度の高い時計)とその絶え間なく重ねられた改良は、ヨーロッパ全土にわたる科学と天文学の驚くべき進歩を表しています。

アーノルドは、時計づくりの技巧をそれぞれのやり方で発展させた、ジョージ・グラハム、トーマス・トンピオン、トーマス・マッジ、ジョン・ハリソンなどのイギリスの類まれな時計職人たちの継承者でもありました。その一方で、彼は、精巧で信頼できる性能を持ちながら比較的容易に製造できる時計を設計することで、時計づくりを新時代へと向かわせた第一人者でもあります。 1780 年に書かれたアーノルドのクロノメーター懐中時計 No. 2 についての報告書の中で、経度委員会は次のように語っています:

「これまで使用してみた限り、この時計がこれまでに作られたどの時計よりも優れているということは、誰もが認めざるを得ない。したがってアーノルド氏には、今後も様々な時計を作り続けてもらい、この分野の職人の技術向上のために国会から贈られる報奨を再び受けて、彼の同胞である他の時計職人たちから賞賛と拍手を受け続けることになるであろう。(2) The Monthly Review or Literary Journal, vol. 58 (London, 1780) ( 2 )

( 2 ) マンスリー・レビュー・オア・リテラリー・ジャーナル、 Vol. 58 (ロンドン、 1780 年)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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